インディーゲーム定義論争はなぜ起きるのか?

インディーゲーム定義論争はなぜ起きるのか?

終わらない論争

インディーゲームの定義は曖昧です。
Wikipediaによると、

インディーゲーム(英語: indie game)とは、インディペンデント・ゲーム(independent game, 独立系ゲーム[2])の略称で、少人数・低予算で開発されたゲームソフトを主に指す。

定義は諸説あるが[4][3]、原義的には、大規模なパブリッシャーの資金援助を受けず[5]、個人や小規模なチームによって開発されたゲームソフトを指す[6]。

と述べられていますが、「定義は諸説ある」という記述からも分かるように論争が絶えない分野でもあります。

本記事は、この論争に終止符を打つべく「インディーゲームの定義はこれだ!」という主張をするものではありません。
そうではなく、「そもそもインディーゲーム定義論争はなぜ起こるのか?」について、類似の概念である「中小企業」を参考に考察し、最後にインディーゲーム定義論争は終わるのかどうかを論じたいと思います。

中小企業との比較

「中小企業」という概念は、企業の規模に着目した分類です。
「規模に着目した分類」という意味では、インディーゲームと同種の概念だと言えます。
実は、中小企業の定義は中小企業基本法で以下のように明確になされています。

業種分類 中小企業基本法の定義
製造業その他 資本金の額又は出資の総額が3億円以下の会社又は常時使用する従業員の数が300人以下の会社及び個人
卸売業 資本金の額又は出資の総額が1億円以下の会社又は常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人
小売業 資本金の額又は出資の総額が5千万円以下の会社又は常時使用する従業員の数が50人以下の会社及び個人
サービス業 資本金の額又は出資の総額が5千万円以下の会社又は常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人

業種分類、資本の額及び従業員数をベースに明確に定義されているので、議論の余地はありません。
そして、国は中小企業の定義を明確にしたうえで、法人税の軽減や各種補助金などの支援策をデザインしています。
中小企業というラベリングは、これらの支援策を受けるための資格免許のように機能しています。

なぜ起きるのか?

資格や免許としての機能

中小企業というラベリングと同様に、インディーゲームというラベリングも資格や免許のように機能する場合があります。
しかし、中小企業に対する多種多様な支援策は国がほとんど一元的にデザインしているのに対し、インディーゲーム開発者に対する支援策はゲーム関連プレスやイベント主催者などが別々にデザインしています。
そして、このことによりインディーゲーム定義論争が起きていると考えます。

具体的にどういうことかを説明します。
まず、インディーゲーム定義論争は以下のような場面で起きます:

  • ゲーム関連プレスがインディーゲームの特集をするとき
  • インディーゲームを対象としたコンテストが行われるとき
  • インディーゲームの展示イベントが開催されるとき

インディーゲームの定義が曖昧だと、「メガベンチャー」のような準大手が参入してしまい、小規模または個人の開発者は埋もれてしまいます。
そこで、小規模または個人の開発者はインディーゲームの定義を明確化することを求めます。
もしもインディーゲームの定義が中小企業の定義のように明確になれば、「インディーゲーム製作者」というのが資格のようになり、特集の対象になれたりコンテストやイベントなどに参加できたりする免許のように機能します。
しかし、インディーゲームの世界には国や業界団体などといった包括的な規制主体が存在しません。
そのため、インディーゲームの定義はゲーム関連プレスやイベント主催者の数だけ存在してしまうことになります。

資格や免許を欲する理由

そもそもなぜ資格や免許を欲するのでしょうか?
まず、ゲームの世界は異常な競争社会であり、レッドオーシャンだと断言できます。
どうしてレッドオーシャンになるのかについては、以下の記事で詳細に考察していますが、本記事に関わる内容で言うと免許や資格に繋がりうる規制がほとんどないことが競争の激化に繋がっています
異常な競争社会で生き残るために資格や免許を求めるというのは自然な流れであり、そしてもし成功すればかなり有効なので、こういった論争はしばしば起きることになります。

インディーゲーム定義論争は終わるのか?

金融・保険・不動産などの規制産業と比べると、ゲーム業界には業界の自主規制として表現規制が多少ある程度で規制はほぼ無いようなものです。
そのため、国や業界団体が統一された規格として「インディーゲーム」を定義してくれることはないです。国や業界団体に裁定を求めることはできないのです。

ただし、スマホアプリの場合は、プラットフォームがApple App StoreとGoogle Playの寡占状態になっております。
それらを運営する巨大プラットフォーマーは、時価総額だけで見ても欧州の先進国のGDPと同じぐらいあり、その影響力や規制力からあたかも「準国家」といえる振る舞いをしております。
こうした準国家は審査という形で既にゲームを強力に規制しておりますし、終わらない論争を終結させることができる者がいるとすれば、それはこれら準国家ではないでしょうか。

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