時短料理全盛の今、あえて「時長料理」をしてみた
家庭料理の消滅
「家庭料理」と聞いて何を思い浮かべるでしょうか?
肉じゃが、唐揚げ、とんかつなど、人によって思い浮かべるものは違えど、きっと心も体も温まるものを想像すると思います。
学校から少し速足で帰り、近所の家からおいしそうな夕飯の匂いがすると、「うちの晩御飯は何かなぁ」と期待に胸を膨らませ、さらに足を速めた人は多いでしょう。
ところが、核家族化と共働きが一般化したことで家庭料理は消滅の危機を迎えています。
従来であれば、祖母から母へと家庭料理が継承され、時間を掛けて料理をするのが一般的でした。
しかし、核家族化により料理が継承されなくなり、そして共働きにより男性も女性もゆっくり料理をする時間など無くなってしまったことで、家庭料理は消滅の危機に瀕しています。
実際のところ、書店の料理コーナーや人気の料理系YouTuberなどは時短料理にフォーカスしている場合が多く、そして特に都市部では外食や冷凍食品の宅配サービスなどによりそもそも料理をしなくてもよい環境になりつつあります。
私自身も料理は好きなものの中々時間が取れず、会社帰りに閉店間際のスーパーで半額になった総菜を食べて飢えを凌ぐことが多いのですが、そんなものでは言うまでもなく家庭料理の充実感に勝てるはずがありません。
「時長料理」をしてみる
料理とは、必要に迫られてやるものではありますが、本来それ自体が五感を大いに刺激する奥深いものでもあります。
材料を切るときの感触や、焼いたり茹でたりするときの音を感じ、そして味付けとともに変わりゆく匂いを嗅いで、耐えきれずつまみ食いをして味わってしまう――これらの感覚を体験できるのは料理をする人の特権なのです。
ところが、時短料理ではその過程が省かれてしまうので、これら料理の醍醐味を味わい尽くすことは難しいです。
そこで、じっくりと時間をかける「時長料理」をしてみたいと思います。
豚の角煮を作る
時間がかかる料理は色々ありますが、今回は豚の角煮を作ってみます。(理由は後述します)
もちろん圧力鍋は使わず、時々面倒を見てやりながらじっくりと煮込んでいくスタイルで作ります。
今回は、スパイスカレーで有名な水野仁輔氏のレシピを参考にして作ってみました。
材料
材料は以下の通りです。
特に八角(スターアニス)は味の決め手なので、もしなければスーパーの中華調味料コーナーなどで購入しましょう。
- 豚肩ロース肉: 300g
- ネギ: 1本
- にんにく: 1片
- しょうが: 1片
- 八角(スターアニス): 1片
- クローブ: 2粒
- シナモン: 1本
- 酒: 150ml
- 水: 300ml
- 砂糖: 大さじ1.5
- しょうゆ: 大さじ1.5
- サラダ油: 少々
- 塩: 少々
1. 材料を切る
豚肉は食べやすい大きさに切り、ネギは1cm幅の斜め切りにします。
ショウガとニンニクは包丁の腹で潰しておきます。
八角は少し香りが強いので、今回は丸々1片使うのではなく砕いて一部を使いました。
2. 豚肉を焼く
フライパンにサラダ油を引き、豚肉に焼き色を付けます。
結構油が跳ねるので注意しましょう。
3. 豚肉を煮込む
豚肉を鍋に移し、酒・水・にんにく・しょうが・ネギを加えて煮立てます。
4. 豚肉を更に煮込む
煮立ったら灰汁を取り、砂糖とスパイス(八角、クローブ、シナモン)を入れて蓋をして弱火で1時間ほど煮ます。
八角の香りが良く、とても味わい深い工程です。
5. 豚肉を更に更に煮込む
醤油を加えて蓋をして再び弱火で1時間ほど煮ます。
今回は煮汁が少なくなっていたので、このタイミングで煮汁を追加しました。
この時点でかなり角煮らしくなっています。
6. 放置して完成!
火を消し、30分ほど放置して、完成です!
おでんが「冷まし」により味が染み込むのと同様、この工程は味を染み込ませるためのものだと思います。
感想
材料を切ったり潰したりする感触、豚肉の焼ける音や煮込むときの音、脂やスパイスの香り、徐々に完成に近づく見た目など、五感をフルに刺激する大変味わい深い過程を経て、とてもおいしい豚の角煮を作ることができました。
これがあれば白米をいくらでも食べることができそうですし、余ったらチャーハンの具にするなどのアレンジもできそうです。
また、今回豚の角煮を選んだ理由でもあるのですが、放置する工程が多いのでテレワークをしながらでも十分作れます。
労働が強化され、時短料理ばかりになっていく現代日本においても、隙を見て「時長料理」というささやかな活動を行うことで、これからも文字通り味わい深い生活を送っていきたいです。