物理シミュレーションゲームで体験するさまざまな流体
はじめに
蛇口をひねる、お風呂に入る、エアコンを点ける。
こうした日常の極めてありふれた場面で、私たちは水や空気といった流体を操作していますが、あまりにも身近すぎる存在である流体について一度体系的に整理したいと思います。
流体とは
流体とは、外部からの力に対して容易に変形する物質のことを指します。
具体的には、液体や気体がこれに該当します。
ただし、固体であっても流体と扱われるものやその逆もあるため、大まかな分類と言えます。
以下では、流体をその性質に応じて分類してみたいと思います。
圧縮性による分類
密度が圧力の変化に応じて変化するかどうかによる分類です。
圧縮性流体
密度が圧力の変化に応じて変化する流体です。
特に気体が良く当てはまり、小学校の理科の実験でピストンを押し込んで空気を圧縮したことを覚えている人も多いのではないでしょうか。
非圧縮性流体
密度が圧力の変化に応じて変化しない流体です。
特に水などの液体が良く当てはまり、こちらも小学校の理科の実験で水が入ったピストンを押し込もうとしてもほとんど押し込めなかった経験がある方もいるかもしれません。
粘性による分類
粘性とは、運動中の変形に対してせん断応力が発生する性質のことです。
粘性が高い流体はその場にとどまり続けようとし、マヨネーズや油のようにゆっくりと流れます。
非粘性流体
粘性を持たない流体です。
実在する流体はある程度の粘性を持っているため基本的には存在しないのですが、粘性の影響が無視できるほど小さい流体を非粘性流体として扱うことがあります。
この場合、圧力だけで運動を記述できるため数学的な計算が楽になるという嬉しさがあります。
粘性流体
粘性を持つ流体です。
そのうちせん断速度とせん断応力との間に線形性が成り立つかどうかで以下のように分類されます。
ニュートン流体
せん断速度とせん断応力との間に線形性が成り立つ流体です。
ニュートン流体はスプーンでかき混ぜると、どんなにゆっくりかき混ぜても、またはどんなに速くかき混ぜても、同じように流れます。
水などの多くの流体はニュートン流体です。
非ニュートン流体
せん断速度とせん断応力との間に線形性が成り立たない流体です。
非ニュートン流体の中には、スプーンでかき混ぜると、ゆっくりかき混ぜるとサラサラと流れるけれど、速くかき混ぜると固くなるものがあります。
このように、流れが強くなるほど流動しにくくなる流体をダイラタント流体といいます。
ダイラタント流体は一時期YouTubeでバズっており、例えば水溜りボンドさんによって投稿された以下のショート動画が有名です。
逆に、流れが強くなるほど流動しやすくなる流体を擬塑性流体、そして一定のせん断応力に達しないと流動を始めない流体をビンガム流体といいます。
物理シミュレーションゲームで体験する
流体シミュレーションエンジン Fluidix を用いて様々な流体シミュレーションゲームを作ってきました。
Fluidixで扱えるのはニュートン流体だけなのですが、それでも粘性を調整することで様々な表現が可能になります。
例えば、先日公開したMagma Maestroは、マグマという高粘性の流体をテーマにしたゲームです。
一方で、以下の2作は水をテーマにしたゲームであり、マグマに比べると粘性は低いです。
粘性の違いによる流体の挙動の変化を直感的に体験していただけると嬉しいです。