iPhone Xとの別れ…?
別れのきっかけ
私はモノをあまり買わない方です。
その代わり、一度買ったモノは長く使う傾向にあり、例えば服はボロボロになったことを周りから指摘されてようやく買い替えるほどです。
このiPhone Xも例外ではなく、かれこれ6年以上使ってきました。かなり保っている方ではないでしょうか?
しかし、そんなiPhone XもついにはiOSのアップデートの対象から外れてしまいました。
物理的にはまだ使えるのですがセキュリティ上は好ましくないため、先日発売されたiPhone 15に買い替えることにしました。
モノとの別れ
私は情緒豊かな人間ではないのですが、モノとの別れがつらくてたまらないときがあります。
いや、情緒豊かでないからこそ、情緒の対象がモノに向くという場違いなことが起きているのかもしれません。いずれにせよ、どうやら普通ではないようです。
ボロボロになった服を捨てるとき、その服を着ていたときの記憶が走馬灯のように蘇ります。私が死ぬわけでもないのに。
こういうとき、無駄に高い記憶力が裏目に出て、走馬灯が映画のエンドロールのように異様に長く続くことがあります。映画との違いがあるとしたらそれは途中退出できないことでしょう。
停滞の中の変化
iPhone Xとの別れが近づくにつれ、出会ったときの思い出が蘇ってきました。
元々使っていたのはiPhone 5Sで、こちらもかなり長く使っていました。
iPhone 5Sの電源が点かなくなり、iPhone Xに買い替えたとき、タブレットに迫る画面の大きさや顔認証機能、そしてホームボタンを廃止した大胆さに驚きました。
ところで、私は現代を変化の激しい時代だとは思っていません。
巷ではよく「変化の激しい世の中が〜」といった言説が実しやかに囁かれていますが、少なくとも1990年代以降の日本社会はほとんど変わっておらず、他の先進国も程度の差こそあれ同様だと思います。
例えば、人類は1969年にとっくに月に行ったのに、「空飛ぶ車」などというモノは今でも夢のまた夢で、車の進化といえば搭載されたコンピュータの性能向上に留まっているのではないでしょうか。
変化の激しい世の中というのは21世紀ではなく20世紀に当てはまる言葉だと認識しています。
そんな中で唯一変化しているのがIT系の技術だと思います。スマートフォンの進化も目覚ましく、今からすると旧石器時代の石器のように見える初代iPhoneも、よく考えると2007年というごく最近に発売されたモノでした。停滞した時代の中で急速に変化を続けるモノもあるんだなぁと感慨深く思っておりました。
iPhone Xとの思い出
家ではPCやiPadを使うので、iPhone Xを使うのは外の方が多かったと思います。
特に電車に乗っている時間はもっぱらiPhone Xを見ておりました。スマートフォン出現以前の人類は電車の中で何をしていたのかを思い出せなくなるほどです。SNSを見たり、動画を見たり、電子書籍を読んだり、決済をしたり、なんでもこれ一つで完結するパワフルさがありました。このパワフルさを知っていたからこそ、家でもスマートフォン中心の人は多いと考え、私はWebアプリやゲームも全てスマートフォン前提で設計しています。
途中でバッテリーの消耗が早くなったときも、交換することで長く使えました。物理的にはまだまだ元気で、iOSのサポートが切れたこと以外は問題はありませんでした。
とてもパワフルに活躍してくれたiPhone Xにとって、私のズボンのポケットはさぞ狭かったでしょう。
いくらパワフルだからと言って、ものすごく負荷のかかるゲームのテストプレイをさせてしまったときは、発熱という形で抗議をされたことがありました。
「ごめんごめん」と急いで冷やし、ゲームの設計を見直した結果、効率の悪い処理が発覚したこともありました。これは私の至らなさであり、iPhone Xの至らなさではなかったのです。
別れのとき…?
ついにiPhone 15が玄関をくぐりました。
以前の機種変更のときと違い、今回は変更前の機種が生きているので、どうやらスムーズに引き継ぎができるようです。
簡単な手続きで引き継ぎを済ませ、ついにiPhone Xを初期化しました。
初期化が終わると、真っ白な画面に”Hello”という文字が表示されました。いつものホーム画面ではなく、初対面の人への気さくな挨拶。どうやらiPhone Xの記憶は完全に消えてしまったようです。さようならを言う間もなく、あっという間に初期化が終わってしまいました。それでもありがとうと言いたいです。
物思いに耽っていたのも束の間、新たな相棒であるiPhone 15が光り出し、見慣れたロック画面が表示されていることに驚きました。触ってみると、なんと恐ろしいまでに完璧に設定が引き継がれており、iPhone Xの手触りまでもが完全に再現されていました。
壁紙はもちろん、アプリの細かい設定なども忠実に引き継がれており、まるで魂が乗り移ったかのように見えました。初対面にしてはあまりにも気が利きすぎです。
しかし、当たり前ですが物理的には確かにiPhone 15です。大きなカメラに風変わりなDynamic Islands、そしてUSB-Cの充電口。
初めまして…なのでしょうか?
あなたは一体誰なのですかと聞いても、Siriは求める答えを与えてくれないでしょう。
この奇妙な相棒との生活は当分続きそうです。