人生100年時代のゲーム製作戦略

人生100年時代のゲーム製作戦略

人生100年時代

人生100年時代」とは、ロンドンビジネススクール教授のリンダ・グラットンが提唱した概念で、長寿時代の生き方について述べた著書『ライフシフト』で紹介されています。
日本は世界一の長寿大国であり、令和2年の第23回生命表によると、平均寿命は男81.56歳、女87.71歳となっています。
さらに、医療の進展で死亡率がどんどん低下していく傾向にあるため、私たちの多くは90歳を超え、100歳まで生きられるかもしれません。
私たちは名実ともに人生100年時代を生きているわけです。

一生ゲーム製作をしていたい

私はゲーム製作を始めて2年も経っていませんが、一向に飽きる気配がなく、できることなら一生続けたいなと思っています。
そこで今回は「人生100年時代のゲーム製作戦略」と題して、一生ゲーム製作を続けるための戦略について考察してみました。

まず、ゲーム製作は能動的な趣味であり、能力が必要になります。
能力の種類によって老いにより衰える部分もあれば、経験の蓄積により深みが増してくるものもあります。
それぞれの年齢ごとに、どの能力を活用するのかを考察します。

次に、ファイナンスについて考えます。
従来は、伝統的な日本企業に勤めていれば手厚い退職金と終身給付の企業年金と公的年金の3本柱で悠々自適の老後を過ごすことができました。
しかし、現在は退職金や企業年金は縮小している傾向にあり、しかも少子高齢化により公的年金もスリム化を余儀なくされています。
世知辛いことに、老後の所得保障について自分でも考えなければいけない時代になりました。
お金の余裕は心の余裕でもありますので、ゲーム製作をする土台となる生活基盤を超長期に渡って築く方法を考察します。

能力活用編

能力別の全盛期

人間の能力を以下の三つに分けてみます。

  • 身体能力
    運動や日常生活において身体を動作させる能力
  • 数理的思考力
    数学や物理学などの抽象的な思考をする能力
  • 想像力
    感性を働かせて想像する能力

各年齢における各能力の推移を大まかに表したのが以下のグラフです。

身体能力

これが一番イメージしやすいと思います。
多くのスポーツ選手は20代でピークを迎え、30代になると多くが引退し、40代でも現役だとその珍しさからレジェンド扱いされます。
身体能力が徐々に低下しつつも、60歳ぐらいまでは日常生活には問題ないことが多いですが、70歳を超えると日常生活も徐々に難しくなってきます。 3つの能力の中で一番ピークが早く、衰えるスピードも早いです。

数理的思考力

数理的思考力のピークがいつかというのは難しい問題です。
ここでは、具体的な職業をベースに考えてみます。

まず、数理的思考力に優れる者として学者が挙げられます。
大学の教授の多くは高齢ですが、教授という地位はその年齢における能力というよりは過去の蓄積に対して与えられたものであると考えられ、高齢期にピークを迎えるわけではなさそうです。
ある年齢における能力が分かりやすいのは学問よりも競技の方で、例えば将棋は数理的思考力を必要とします。
将棋のピーク年齢をタイトル別に検証してみたという記事によると、どうやら30代がピークのようです。
身体能力に比べると衰えが緩やかであり、将棋の例としては加藤一二三九段は77歳で引退するまで現役として活躍していました。

想像力

想像力のピークがいつかというのは更に難しい問題です。
10代で処女作を発表した三島由紀夫のような人もいれば、40代で名作を連発した宮崎駿のような人もいれば、90代で現役の漫画家として活躍したやなせたかしのような人もいます。
おそらく、身体能力や数理的思考力に比べると全年齢を通じて安定している可能性が高く、そのためグラフは緩やかな台形型にしました。

ゲーム製作に必要な能力

上記の各能力は、ゲーム制作にどのように必要になってくるでしょうか?

身体能力

幸いなことにゲーム製作には身体能力が大して必要ありません
長時間集中するという意味での体力は必要かもしれませんが、動き回る必要は無いので、その点では老後でも続けやすいでしょう。

数理的思考力

プログラミングやゲームエンジンの開発および理解に必要です。
プログラミングと数学は深い部分で密接に関わっており、また、ゲームエンジンを開発したり理解したりする上では高度な情報科学や物理学の知識が必要になります。

想像力

ゲームのデザイン、企画、ストーリーなどに必要です。
他にもサウンドやキャラクターなどでも必要でしょうし、想像力が必要とされない場面を思いつく方が難しそうです。

能力活用戦略

身体能力については、健康でいればよいでしょう。
戦略などという大仰なものではなく、酒やタバコを避け、栄養をしっかりと摂って適度な運動を定期的にするという当たり前の話になってきます。

ゲーム製作に必要な数学・物理・プログラミングは若いうちから意識して鍛える必要があります
というのも、数理的思考力のピークは意外と早い上に、しかも数学などは地道な積み重ねが要求されます
一方で、プログラミング言語を一つ理解していれば、他の言語も理解しやすいというのは多くの方が同意すると思われます。
一度体系的な知識を身に着けることができれば、50代以降に新しい技術が出現しても過去の経験からの類推で何とか追いついていける勝算が立ちます。

老年期には数理的思考力のピークが過ぎているので、ゲームの背後にある仕組みの部分については過去の蓄積で乗り切り、相対的に優位な想像力を活かして立ちまわっていくことが想定されます。

ファイナンス編

所得保障

少子高齢化により公的年金が縮小を余儀なくされ、また、日本型雇用慣行が崩れるに従い企業の退職金や企業年金も縮小していく傾向にあります。
したがって、一人一人が退職後の所得保障を考えなければならない時代になったと言えます。
また、私のように本業ではなく趣味としてゲーム開発をしている場合は、本業の負担を減らさなければゲーム開発の時間とエネルギーを捻出できません。

労働と資本

労働による資産は足し算で増えていきます。
会社は株主のものであり、従業員の給与は販売費及び一般管理費に分類される費用に過ぎません。
そのため、会社の業績が良くても精々ボーナスが多少上がる程度であり、労働者の給与は一定の範囲内で安定しています。
給料から生活費を差し引いた額を貯金することで富が増えていきます。
横軸に時間をとり、縦軸に金額をとってグラフにすると、おおむね直線のように推移します。

一方で、資本による資産は掛け算で増えていきます。
100の元手を持っているとき、年間利回りが5%であるとして、1年後には105になります。
2年後には、この5の利益も再投資されるので、105×1.05=110.25となります。
これが複利であり、横軸に時間をとり、縦軸に金額をとってグラフにすると、指数関数のように推移します。

人生100年時代を考えるにあたって、100年という極めて長いスパンでは労働と資本では資産に非常に大きな差が生まれます。
そのため、できるだけ早いうちから投資に取り組むことが労働負担の減少と老後の所得保障に繋がります

投資はギャンブル?

日本人は保有資産に占める金融資産の割合が低いことで有名であり、投資はギャンブルであるという認識が広く浸透していると思われます。
前述の複利の話も、実際には5%の年間利回りが確定しているわけではないので、ある年で急に暴落してしまうかもしれません。
その意味では確かにギャンブルかもしれませんが、リスク回避をするための方策として長期積立と分散投資があります。

長期積立と分散投資

長期積立

「個人で投資してもプロの餌食になるだけだ」という言説をよく耳にします。
しかし、個人にあって機関投資家にはない強みというのが存在します。
それは、超長期で投資できるということです。
機関投資家は短期的な収益を強く求められる一方で、個人の投資家は長期的な目線で投資することができます。
長期に渡って一定の額を投資し続けるという長期積立の方法によって、短期的な相場の変動に左右されずに資産を築くことが可能です。
(詳しくは「ドルコスト平均法」で検索してみてください)

分散投資

ファイナンス理論の格言で、「卵を一つのカゴに盛るな」というものがあります。
これは、性質や値動きの異なる複数の資産に分散して運用することにより運用成果を安定させることの重要性を説いています。
ただ、個人で多数の資産を保有するのは手間や手数料の面から現実的ではありません。
そのため、指数連動型の投資信託などに頼るのが現実的です。

時間と心の余裕

長期積立と分散投資に共通するメリットは、放置しているだけでいいということです。
毎月一定額の投資信託を購入し続けるような場合、一度口座を開設してしまえばあとは勝手に投資されていきますし、ポートフォリオのリバランスのような手間のかかる作業もファンド側で勝手にやってくれます。
そのため、毎日市場に張り付いて一喜一憂する必要が無く、時間と心の余裕が生まれるため、労働と違ってゲーム製作の邪魔にならないです。

長期積立投資シミュレーション

複利の効果を実感していただくために、一定の利回りを仮定して、毎年一定の額を投資した場合の元利合計額の推移を計算するツールを作成しました。
1年あたりの投資額と年利回りを入力すると表が更新される仕組みになっています。
毎年一定額を投資するので投資額は直線的に増えますが、運用益は指数関数のように増えていくのがよく分かると思います。

年数元利合計額(①)投資額(②)運用益(①-②)
555350053
101,2581,000258
152,1581,500658
203,3072,0001,307
254,7732,5002,273
306,6443,0003,644
359,0323,5005,532
4012,0804,0008,080
4515,9704,50011,470
5020,9355,00015,935
5527,2715,50021,771
6035,3586,00029,358
6545,6806,50039,180
7058,8537,00051,853

投資先の選定

長期積立と分散投資がリスクの軽減に有効なことを説明しましたが、具体的にどの資産クラス(国内債券、外国株式などの分類)に投資すればいいのでしょうか?
これは非常に難しい問題で答えがありませんが、資産クラスの配分については『エンダウメント投資戦略』という本に書かれている戦略が参考になります。
同書は、返済不要の自己資金を超長期で投資できるという点において個人投資家と大学基金が似ていることに着目し、それらの基金の運用方法を参考にするという戦略を採っています。
例えば東京大学基金のポートフォリオは

円ベース債券 グローバル株式 オルタナティブ
60% 20% 20%

となっています。(寄附金資金運用報告書(令和3年度))
グローバル株式については世界株式(日本含む)に連動する投資信託を購入するなど、各資産クラスについて指数連動型の投資信託を購入することで同様のポートフォリオを再現できます。

この敷居が高い場合、ターゲットイヤー型ファンドだけを買うのも一つの方法です。
ターゲットイヤーファンドは、特定の目標年度(ターゲットイヤー)を設定し、その年度に向けて資産配分を自動的に調整する投資信託の一種です。
資産配分を自動設定してくれる上に、ターゲットイヤーが近づくごとに資産配分をリスクの低いものに組み替えてくれます。

長期積立投資のスキーム

資産運用で得た所得は原則として課税対象であり、現在では20.315%の税率が適用されます。
しかし、国は公的年金がスリム化したことで国民が自助努力する必要性を認識しているため、長期積立投資をする上で税制上の優遇が為されるスキームを用意しています。

確定拠出年金

確定拠出年金(Defined Contribution、以下「DC」)は、公的年金制度を補完する老後の所得保障手段として創設されたスキームです。
企業が実施する企業型DCと、個人で加入する個人型DC(こちらについてはiDeCoという名前の方が有名でしょう)がありますが、いずれにも共通するのは非常に強力な税制上の優遇措置があることです。

拠出時

企業型DCであれば会社が拠出する掛金は給与所得と見なされず、個人型DCであれば加入者が拠出した掛金は給与所得から控除されます。
この税メリットは超過累進税率の高い高所得者ほど莫大で、仮に定期預金に投資していても税メリットの分だけで確定リターンがあると考えることができます。

運用時

運用益は非課税です。

給付時

一時金受取と年金受取を選択できます。
年金として受け取る場合は公的年金に係る雑所得として課税されますが、給与所得よりも税率が優遇されています。

少額投資非課税制度(NISA)

こちらはDCと違って所得控除こそありませんが、運用益が非課税でありDCよりも柔軟に利用できるため、余裕があればDCと併用するのが良いと考えられます。
なお、2024年から新NISAが始まります。

最後に

人生100年時代を通じてゲーム製作をするための戦略について語ってきました。
各年齢においてやるべきことや生活の基盤についても見通しが付けば、あとはやるだけです!
もっとも、そのやる気を維持することの方が大変であるかもしれないのですが、それでも戦略を持つことの意義というものはあると考えております。

本記事の内容は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の投資行動を勧奨するものではありません。
本記事の内容に基づいて行われた投資行動の結果について、筆者は一切の責任を負いません。
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