藤木雅彦展 ―幾何学的アートの試み― で学んだこと

藤木雅彦展 ―幾何学的アートの試み― で学んだこと

藤木雅彦さんについて

Twitter(現X)を眺めていて、ふと気になる経歴の方を見かけました。
その方こそがまさに藤木雅彦さんで、東京大学理学部数学科卒業後、東京工業大学大学院で修士号(微分幾何学)を取得し、シティ大学(現ロンドン大学)で博士号(アクチュアリー学)を取得なさったようです。
そのだいぶ後に横浜美術大学絵画コースを卒業なさり、第78回現展新人賞を受賞されたとのことでした。
今回は「幾何学的アートの試み」ということで、立方体をベースにした幾何学的なアートを展示なさるとのことでした。

私は数学、そして幾何学的なアートに強い興味を持っており、大学を卒業して社会人を経験した後に美大に入って芸術の探求を始めるという生き方にも深い感銘を受けましたので、「これは行かなければならない!」と思いました。

展示案内

展示

会場であるギャルリー志門は銀座にありました。
銀座は観光客で大いに賑わっており、群衆を掻き分けながらなんとか会場にたどり着きました。
会場は非常に落ち着いており、静寂な雰囲気に包まれておりました。
上記の展示案内の画像のような立方体をベースにした幾何学的アートが多数展示されていたほか、製作に使ったスケッチブックも公開してくださっており、製作過程を開示している展示会は珍しいと思いますので驚きました。

テーマは「直線的世界の探訪」、そしてサブテーマは「三次元と二次元の探求」ということでした。
上記の展示案内の画像のように立方体に交差や鏡像反転や影による奥行きなどの要素を反映させた様々なアートが展示されていました。
私はかつて生物学の本を読んだときに、裸眼立体視について論じる章に興味を持ち、錯視にハマったときがあります。
網膜に映し出される像は平面のはずなのに、どうしてヒトの意識にはそれが立体として浮かび上がるのか――当たり前のことを改めて考えると非常に難しいと感じた記憶があります。
これらのテーマによりそのときの記憶が呼び覚まされました。

自分で考えるということ

会場には藤木さんがいらしており、お話しさせていただく幸運に恵まれました。
驚いたのは、図像化を手作業でやっているということでした。
加えて、線型代数を用いた計算式の考案もご自身でなさっているということでした。
そして制作手法の解説文には、以下のようにありました。

CGを使ったら簡単ではないかと思われるかも知れないが、計算方法を考えたり、計算結果の数値から実際の図形を頭の中でイメージしたりすることが、探求の一部分になっており、何より作家の楽しみともなっている。

最後の「何より作家の楽しみともなっている」という部分には大変共感しました。
私も物理シミュレーションをするときにはエンジンを使わず、計算方法を考えたり実装で試行錯誤したりしておりますが、そういった過程はプレイヤーには見えないものであり、何より私の楽しみとなっています。
また、自分で考えることで理解が深まった経験には枚挙に暇がありませんし、「探求の一部分になっており」という部分はそうしたことなのかなと考えておりました。

幾何学的アートというテーマだけではなく、ご経歴に見られるような生き方や、そして自分で考えるということについて、本当に感慨深かったです。
私は藤木さんに比べると青二才ではありますが、勝手ながら人生の師としての敬意を抱かせていただいております。
ペンと方眼紙、私も使ってみましょうかねぇ…。

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